第十二回 DJ機材

 




 今回はDJ機材の仕組みを含め、導入の手口について触れていこう。どうしても世間では「DJなんてカッコだけ」なんて声も聞く、まぁたいていは心無いバッシング程度と聞き流してもいいのだが実際の仕組みを知っている人は結構少ない。まずはその辺の理論からはじめよう。
 まず「」はどういうものかということをあらかじめいっておきたい。それは「波動」であるということだ。人間が音を聞くというのは、鼓膜が波動を受け、その振動を脳が電気的に処理することにある。つまり機材においても端的にいうと「波動を電気的に処理する」物なのだ。もちろん機材はそれを「出力」して終わりだが、人間なら脳で処理したのを「感動」という形で出力できるのも忘れてはならない。

 まずはターンテーブルとアンプの関係について。ターンテーブルと一口に言ってもレコードを聴く仕組みを理解しておかないと機材を買うには至らないのだ。それにはアンプの仕組みと合わせて理解しないといけない。アンプといってもなじみはないかもしれないが実はかなりの人はそれと知らずに使っているはずだ。最近はミニコンポの値段が安くなり普通に学生でも買える。そのミニコンポの中にアンプは含まれているのだ、ミニコンポの説明書の中には「仕様」というのが書いておりアンプと書かれているはずだ。そこにある入力が多ければそれは多機能に使える可能性がある。入力端子に何らかの出力を挿せばそのミニコンポで音を出力できる。例を挙げるとゲーム機についてるケーブルで黄色だけをTVにさし赤と白のをミニコンポの入力端子にさせばゲームの音をミニコンポで聞ける。では、同じようにターンテーブルをつなげれればいいのかというと必ずしも合っているとはいえない…なぜならターンテーブルと他の機材では決定的に違う要素があるからだ。
 最近の機材のほとんどはLINE出力であるがターンテーブルはPHONO出力だということだ。 ターンテーブルというのは針で音を拾うがその音自体は非常に微弱なので増幅しないといけない。言い換えれば波動の振幅幅が今の機材と合わないのだ。増幅する装置をフォノイコライザといいPHONO入力のあるアンプにはすべからく入っている。そう、ミニコンポにはPHONO入力がないのでターンテーブルをつなげられないのだ。そういうわけで壁はどういう風にPHONO入力を用意するかとなる。では具体的に用意する手段を挙げよう。

1、PHONO入力のあるアンプを用意する。
2、フォノイコライザを用意する。
3、フォノイコライザを搭載したターンテーブル(レコードプレイヤー)を用意する。
4、DJミキサーを用意する。

 まずは「PHONO入力のあるアンプを用意する」について。実際の所そのまんまなのだが、接続としてはこうなる。
ターンテーブル→アンプ→スピーカー
 アンプまで経路が少ないため音質は一番いいのが特徴だ。クラシックのリスナーは基本的にこの方式が普通だ。かかる値段としては青天井なのだが¥30000位から始まり上は限りない。本気でリスニングをするのには一番オススメだ。
 次に「フォノイコライザを用意する」について。フォノイコライザも単体で売っている。コレを使うことによりPHONO出力をLINE出力に変えられるのでミニコンポにつなげられる。
ターンテーブル→フォノイコライザ→アンプ→スピーカー
 やり方としては余り知られていないが確かに楽な方法だ。実際的にはアナログからサンプリングを作るために使っているDTMユーザーが多いそうだ。フォノイコライザの価格も¥10000も出せば十分におつりが来るのでいずれ本気でやろうというステップアップにはオススメだ。
 そして「フォノイコライザを搭載したターンテーブル(レコードプレイヤー)を用意する」について。最近は利便性を考慮に入れこういうプレイヤーが増えてきている。フォノイコライザ内蔵されているのでLINE出力がついているのでこちらをミニコンポにつなげれば良い。
ターンテーブル→アンプ→スピーカー
 最初のと経路は同じだが、どうしてもアンプにフォノイコライザが入っている方が回路の都合上音は良い。価格としてはターンテーブル代のみ¥10000〜となり、手は出しやすい。だがDJを目指すなら避けたい組み合わせだ。詳しくは後述するが、かのテクニクスのターンテーブルはPHONO出力しかないので自然とこのやり方は消える。アナログを始めたいけどMIXしたはりしないし、そもそもそんなに音を出せない環境にはオススメできる。
 最後に「DJミキサーを用意する」について。MIXするにはDJミキサーが必要だ。DJミキサーはターンテーブルをつなぐ都合上当然フォノイコライザがついておりLINE出力となっているのでミニコンポにつないだり出来る。接続としては
ターンテーブル→ミキサー→アンプ→スピーカー
 賢明な方なら予想は付くと思うが、確かに直付けに比べて音質は下がる。しかしミキサーとは基本的に音質を変える物なので問題はない。ただ、ミキサーには当然質はあり良質なものほどロスは少ない、無論良質なものほど高価になる。¥20000くらいから始まり上は限りない。
 とこんな感じで上げてみたが、最も気になる機材といえばターンテーブルとミキサーではないだろうか?続いてそちらについて見ていこう。

 ターンテーブルというと(先ほども出たが)DJといえばテクニクスSL-1200シリーズというほど世界に浸透している。
 このページのトップ↑のはSL-1200MK3で左の写真のものはSL-1200MK3Dである。SL-1200MK3Dは若干後期モデルでSL-1200MK3との違いはあるものの使用感は全く変わらない。ちなみにSL-1200MK3DはSL-1200MK3にピッチリセッターの追加と電源が埋め込み式になっておりスクラッチや頭出しの際に誤って電源を切ることが少なくなっている。2003年5月現在はSL-1200MK5が最新モデルだが、SL-1200MK3での完成が色濃く出ており今のモデルの基本になっている。しかしなぜにこのシリーズがそこまで好かれているかというと音の出力もさることながら何よりもその耐久性とメンテナンス性そして安定性にある。サーバー用のPCなどでも同じことが言えるが性能以上に何より大事なのはこの三点である。その耐久性だが、このターンテーブルは非常に重くしっかりした作りになっている。構成しているパーツのどれもが重く普通に移動する程度ではまず壊れない。安定性にも通じるが、クラブでも色々な人が毎晩まわすはずなのだがこのターンテーブルがいきなり壊れたという話はまず聞かない。私もイベントに数回、引越しを二回してその度もっていったが全く壊れない。次にメンテナンス性、基本的に機材というものはある程度はメンテナンスしないといけない。特にギターなどはチューニングが命でライブでもスペアを用意するなどの工夫をしないといけない。だがDJプレイというのは周知のとうりノンストップが基本なのでメンテナンスのために止めることなど出来ない。ではこのSL-1200シリーズはどうすればいいのかというと約1000〜1500時間に一回オイルを注すというもの…基本的にメンテナンスはいらないと思ってもいいほどしないでいい!個人のユーザーで分解してオイルを注したことある人はいるのかとまで思ってしまう。これを可能にしたのはその仕組みにある。それまでのターンテーブルはベルトで回転させる方式、もしくはモーター式が主だった。しかしこれらは非常にもろく、頭だしでとめたりすると即オシャカになったことも珍しくはない。しかしこのSL-1200シリーズでは電磁石を中心としたダイレクトドライブの搭載によるからだ。磁石なので止めても壊れるものはなくフレミングの法則により回転は続けるのでスクラッチ等の時フィードバックが発生するため手で感じる感覚が発生する。更に回転を始めてから規定の回転に行くまでの早さも最高に速いのも画期的であった。今までのものはどうしても初速があるため頭だしも大変だったのだ(アナログのふちのの無音部分があるのはこのため)。少し話がそれたがそして安定性については前二つの理由ともに導かれるはずだ。しっかりしていて重いのでスクラッチなどで激しく動かしてもほとんど動かない耐震性はここから出てくる。ベルト式では気候でベルトが凍ったり伸びたりしたがダイレクトドライブでは全くそうゆうことはなくなった。最近はDJ向きターンテーブルを出すメーカーは多い。だが逆回転やLINEアウトなどの付加機能目当てにセカンドプレイヤーにするユーザーがほとんどだという。だがその耐久性とメンテナンス性そして安定性において上回ったという話は聞かない。以上のことからDJにしろリスナーにしろ最もお勧めしたいのはこのテクニクスSL-1200シリーズで間違いはない。
 だが気になるのはその価格である。これだけのものを作るのも相当手間かかるので価格は実売で¥50000前後(機能追加した限定モデルは¥70000前後)…しかも忘れてならないのはカートリッジ、要はレコード針も買わないといけない。トップのSL−1200には¥5000前後の普通のがついているが、サイドのSL-1300にはハードなプレイ向きのカートリッジがついている。こちらは¥20000前後するのでプレイスタイルと予算によって考えたい。MIXを本気で考えると当然二台必要でかかる金額は二倍である。そのためヌマーク社などの質が落ちるプレイヤーを買う人も最近は多い。またリスニング用の「フォノイコライザを搭載したターンテーブル(レコードプレイヤー)」は基本的にベルト式なので価格は格段に下がる。昔のように気候で伸び縮みをすることはまずないので割り切るならこの選択も入れたい。こちらだとたいていカートリッジは同梱されているし、オーディオ用品で有名なナガオカが替え針を大体出しているので扱いのあるCD屋にて取り寄せできるのでメンテナンス性はそんなに悪くない。

 次にミキサーについて説明していこう。
 そもそもミキサーとは何のために使うかというと音質音場の調整に使うのが本当の使い方なのだが、DJミキサーの意義は二曲もしくはそれ以上の曲を混ぜ合わせてフロアを演出するための装置となる。よって音楽制作用のミキサーに比べてクロスフェーダーを中心としたフェーダーに重きが置かれている。もちろんその場で音質音場の調整もしないといけないので中級クラス以上のミキサーにはイコライザ(ツマミ)がついている。今回写真で紹介しているのはどちらも上級クラスのDJミキサーだ、トップ↑に出ているのはパイオニア製DJM-500。現在二世代前のモデルとなっているがエコーをはじめとしたエフェクタが内蔵されており入力系統もかなりある。テクノやハウスを中心としたプレイヤーにはベストモデルと呼ばれている。またユーロビートやダンスポップのDJには最高級のミキサーとの呼び声も高い。右の図はVestaxのPMC-50A。エフェクタこそついてないが非常に細かい音質調整は正にプロ仕様。その割りにクロスフェーダは非常に軽いのでスクラッチ時やつなぎの時にナチュラルに出来るのだ。入力系統も16以上あるのでギターなどつないでのMIXなどにも余裕で対応する。二つとも同じようでコンセプトは確実に違うのがお分かりいただけるだろうか?結局ミキサーに求めるのは自分のスタイルに合わせたものを買わないといけないのだ。例えばテクノでよくやるスタイルはクロスフェーダを真ん中にして音量フェーダだけでやる方法、そのためにはしっかりとした音量バランスが取れるものを選びたい。ハウス、トランスでよくやるスタイルだとイコライザによる高中低の音質調整はやはり欲しいし、ブラックだったらクロスフェーダの動きのよさは何より重要だ。そうなるとミキサーはとんでもないくらい大量に出ているのも分かっていただけるだろう。また、ミキサーはある程度消耗品」と考えても差し支えはない。特にクロスフェーダは長い間使っているとどうしても接点がぼろになってきて思う通りできなくなる。もっとも上級ミキサーのほとんどはクロスフェーダの交換が聞くため結局の所ランニングコストが安い場合がある。よくとれば最初から壊れるものと考えると、はじめは安いミキサーを買って練習して後で良いものを買う手もある。実は割とこの方法はオススメで自分のスタイルが決まらない人も安いミキサーを買いそれからスタイルを確立したという話も多い。また気になるのはその価格だろう。安いもので¥10000〜といった所ちなみにDJM-500は購入価格¥89000、PMC-50Aは購入価格¥160000だった。

 私的なオススメはターンテーブル自体はテクニクスSL-1200シリーズで間違いはない。フォノイコライザを使えばばコンポにつなげれるのでライトユーザも手が出せる。のちのち本気でやる場合でも使えるし、やる気がなくなった場合でも世界的に需要があるのでそこそこの値段で売れるだろう。ミキサーについてはスタイルによって変わるのでこれというのは難しい。まずはショップにいって触ってみるのがいいだろう。通販で見たこともないものを買うのは絶対に避けるべきだ。また中古品に対する考えもある。いまはオークションで買える時代なので考えに入れる人もいるだろう。もう予想は付くと思うがテクニクスSL-1200シリーズにおいてはもともとめったに壊れるものではないので売る側も大体の程度の物を売るだろう。問題は持ってくる手段だ。この機材とはいえさすがにセットされた状態で縦にしたり逆さにしたりするとさすがに壊れる。それゆえこの機材は元は分解した状態で規定の箱に収納されているので配送する場合は元の箱に分解して送れるか?、もしくは完成した物を水平の状態で車に乗せて持ってこれるか?など細かい所まで打ち合わせしたい。ミキサーについては中には悲惨な程度の物まであるので特に注意が必要だ。だが安物のミキサーを練習用の消耗品として買うならそれもアリだろう。ミキサーについては正規の箱がなくても緩衝材でしっかりくるめば問題はまずないのでまだ安心だ。そして最後になるがターンテーブルを含めたDJ機材に一番大事なのは置く場所である。上に物を置いたり出来ないのでブラウン管テレビと同じくらい場所とるししかも二台とミキサー置くと大体縦に0.5メートル横に1.5メートルほどの広い場所を必要とする。ある意味アップライトのピアノと変わらないスペースがいる。お金と共に機材を置けるスペースやシステムラックを確保しないうちは導入してはいけない…。
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