Ilice's Review (10)



Come To Me


artist:Satosi Tomiie feat.Diane Charlemagne
label:SME



  今回は世界に誇れる日本人DJ、Satosi TomiieCome To Meをご紹介。アルバムFULLLUCKからの先行シングルカットで中でもこの曲は日本産の本格ハウスとして話題をさらった。全米、全英のクラブチャートでもハウス部門では日本人ではGTSに続いて登場した。もともと「SHELLGARDEN」という曲をモチーフに作られ(ジャケにも書かれている)、映画HEAVENZという邦画のテーマ曲にもなった。親友でもあるDJ KO KIMURAのMIXワークスでも最大の盛り上がりパートに使われた。ではMIXのご紹介。
 まずはTHE CLASSIC CLUBSHELL。四つ打ちのドラムなのだがエンベローブにこり面白い。ヴォーカルはソウルフルというよりは非常に伸びやかな感じでサビではコーラス中心で出来ている。全体的に落ち着いたつくりなので今聞くとおとなしい印象だが、当時のハウスはガラージュでも音がハードな傾向があったのでこういう感じのがフロアに来ると返って目立ってきた。実際LUNESE行ったとき聴いたがゆったりと体動かすのは気分がよかった。次にORIGINAL INSTRUMENTAL。基本的にはTHE CLASSIC CLUBSHELLのインストなのだが注目は後半にある音がハードめになっておりピアノ系ラウンジハウスからハードハウスやディープハウスに飛ぶときに役に立ってくれる。彼らしい実戦的なMIXだ。最後にDUBSHELLL。だいたいMIX名から想像出来るようにDUBMIXとなっているのでループベースのプレイがしたいときに役に立つ。音自体もハードに作られているので私のようにハードハウス中心でやっているものにとっては非常に役に立つ。
 しかしHEAVENZという映画、他にもYO*CやTOMOなど日本人DJが集まって曲を提供したらしいがB級映画の域を出てないらしい…何気に見てみたい。
Your Love / Hiatus


artist:Inner City
label:6 by 6



 時は1996年、日本のクラブシーンではハンドバッグハウスが流行っていた。バッグを持ったままでものんびり踊れるポップなハウスミュージックというところから付いた名前で出所は主にUKで出始めたハッピーハウスが96年ごろ姿を変えたといわれる。また、このハンドバッグの作りと展開を元にテクノの要素を加えたハードバッグは後にNu-NRGとよばれることになる。かのTIDY TRAXもレーベル第一弾はハンドバッグの曲であることは有名である。そんな中でも日本はもとより世界中のDJが確実の押さえていた一曲が今回のInner CityYour Loveである。正にいたるところでかかっていたので聞けば頷く方も多いだろう。Inner CityはSaunderson兄弟を中心にしたプロジェクトでこれまではデトロイトテクノ中心であったがこの曲からハウス中心の仕事をしていた。その後6 by 6の倒産により流浪していたが最近復活してディープハウス路線に転向している。ではMIXのご紹介。
 まずはSerial Diva Paris Is Burning Club Mix。当時腕利きで知られるSerial Divaをリミキサーに迎えたMIXで、これがもっとも世に出たMIXだ。前半はシンプルな四つ打ちのドラムに「your love〜」と上ものボーカルがのっけているのだがそこに押し寄せるようにシンセの音が入ってくる。ボーカルのゲインのメータが触れたあたりでお待ちかねのピアノのバッキングと同時に歌が始まる!という正にブレイク明けの展開がくるのは嬉しい!お気づきのように今で言うトランスの展開に近いのがポイントだ。次にkevin Sunderson's Club Mix。実際こちらがオリジナルなのだが前述のMixのほうが目立つ。こちらはおとなしめのラウンジハウスとなっている。ゆっくりとした感じでもあるのでチルアウトの方向で使うとよい。またヴォーカルの歌詞は違うので聴く価値ある。しかしこのMIXを全盛期のサンコレで使われているのを聴いたことある。無論トランスとフェードであわせたのだがDJの才覚は正に無限の広がりがあるのを改めて思い知らされた。最後に別曲Hiatus。こちらはトライバルサウンドになっているのが最大のポイントだ。ヴォーカルもこういうベースラインだとよりスリリングに聞こえてくる。ハードな展開にするにはもってこいの曲だ。そんなこともあり私は相当このシングルを使いまわしていた…。
 なお余談だがこの6 by 6というレーベル…かの@社が手を出したのだが程なくして倒れてしまった。当時の@社はダンスミュージックに対する情熱は評価できたのだが、昔も今も経営陣がボンクラであるのはどうしょうもない。イベントでは本当にハンドバッグ持たせようとしてたし…。
This Is Your Night


artist:Amber
label:Tommy Boy



 今回はAmberThis Is Your Nightをご紹介。こちらも各国のクラブチャートを総なめにした曲なので知ってる方の多いかもしれない。近年Amberといえば、SEXUALなどのREMIXがあたりトランスのアーティストとしても名が知れてきたのも昔から知っているものとしては嬉しい限りだ。またこの曲も収録されたアルバム「COLOUR OF LOVE」も非常に出来がよく、ハウスを聴き始めるならば是非ともお勧めしたいアルバムだ。ではMIXのご紹介へと進もう。
 まずはOriginal Mix。「ダバラバラ〜」というボイスは当時ME&MYなどの流行系ダンスポップと同一視されがちだったが曲自体はしっかりした四つ打ちのダンス系ハウス、版権さえあえば間違いなくダンスマニアの入っていたような曲調だ。しかし本当のところこの曲の使い勝手のよさは贅沢なまでのREMIXにあるのだ。では、Berman House Mix。AmberのプロデューサーであるBerman brothersのセルフリミックスで基本的にはOriginal Mixの展開を踏襲してある。全体の上物としてピアノのバッキングが入り、ハンドバッグサウンドの王道として完成されている。無論日本人好みの音だけにクラブでもかかりまくった。次に1080 Mix。こちらはDJ ENRIEによるREMIXでハードハウス系のMIXだ。ヴォーカル部分がそのままのっているので飛び道具には最適だ。このMIXは曲が長く前半後半で上物が少し変わっているのもポイントだ。前半は妙にオケヒットが目立つのに対し後半はへんてこなシンセが目立つ。通して聴くと使うのは難しいが分けて使うといい感じになってくる。最後にmousse t extended mix。こちらのリミキサーはなんとJunior Vasquez!!さすがにextendedと銘打ってあるだけあり多分Originalよりいい…。曲全体がダンスクラッシク風に仕上げてありフロアではフルタイム使いやすい。私はよくGTSの曲と組み合わせて使ったりしたが他のダンクラともあうし、UK系のハンドバッグともUS系のソウルハウスともあうので切り札として是非ともデッキに入れておきたいところだ。
 しかし、Junior Vasquezに毎回驚かされるのはその作風の多彩さだ。オールジャンルにクラブミュージックにかかわれるのは正に世界No.1DJの名に相応しいだろう。
Pray For Love


artist:Love To Infinity
label:Mushroom



 今回は私がハウスをやっているときに一番かけた曲であるLove To InfinityPray For Loveをご紹介。Love To InfinitはLee兄弟とヴォーカルのLouiseの三人で構成される。正式な活動はアーティストではなくリミキサーとして始まった。当初はあまり目立たなかったがマドンナのInto The Groove、シェリル・リンのGat To Be RealのRemixをすることによって一気に目立ってきた。その後もセリーヌ・ディオン、グロリア・エステファンのRemixをすることによってTony Moran、David Moralesと並ぶハウスのトップリミキサーとして数えられることになる。そんな彼らのアーティストとしてのデビューは当然といえば当然だ。今回のPray For Loveは3rdシングルで、全世界のクラブチャートでNo1の座に着いた曲だ。ではMixミックスのご紹介。
 まずはClassic Paradise Mix。Love To InfinityにおいてClassic Paradise Mixというのは重大な意味がある。彼らの仕事の上でこのMix名をつけることが多く、大体においてピアノを前面に押し出し、ベースラインはコテコテの四つ打ちでMixで統一されている。世界的に彼らお得意のスタイルと認知されているので信頼が置ける。正直なところ非常に日本人が好きでたまらない作りになっている。もちろん、この曲でもしっかりとその作りがなされていて実際日本でもかかりまくった。ピアノ以上に引き込まれるのが何よりそのヴォーカル!このソウルフルな歌声が生きてこそこの曲の圧倒的な存在感が生まれてくるのだ。また曲の時間が長く9分近くあるので一番いいところだけ使ったり、全体を通して使ったりと戦略がいろいろ生まれてきて面白い。次にEpisode 4 Mix。こちらはヴォーカルはサンプリングにとどめ、Classic Paradise Mixのフレーズを使ったハードハウスのMixだ。シャウトもサンプリングされスピリチュアル的なアプローチもされているのが面白い。余談だがEpisode 4と銘打ってあるとスターウォーズを意識してしまうが、はっきり言って関係なさそうだ。次にDevid Morales Club Mix。Devid Moralesによる第二のメインといえるMixだ。こちらもピアノをメインとしつつもClassic Paradise Mixにくらべおとなしい作りになっており、追加されたユーロハウス的なフレーズとうまく合わさっている。ヴォーカルもこのMixで取り直されたらしく作られた違和感がないので、こちらをメインのMixと思った人も少なくはない。使い方でいうとClassic Paradise Mixが大箱向きに対しこちらは小箱で使うのがあっていた。そして最後にDevid Morales Pray A Dub。その名のごとく前記のMixのDubとなっているのでハードハウス的に使えるがあまりかかっているのを見たことはない。今回はClassic Paradise Mixの試聴を作ってみたので参考にどうぞ。
 なお私は一時期Love To Infinityに大ハマリして来日ライブにいきまくってこんなのもらったりしました…。
AMERICA [I LOVE AMERICA]


artist:Full Intention
label:BIG BEAT



 私のレビューは最近ハード目が多いのでこの辺からはしっとり聞き入れるHOUSEの名曲をご紹介しよう。今回はFull IntentionAMERICA [I LOVE AMERICA]。Full Intentionといえば今やディスコスタイルのREMIXにはなくてはならないとされるリミキサーだ。Full Intention自体はMike GrayとJon Pearnの二人を中心に時代時代でいろいろなアーティストが参加しているようだ。今回のAMERICA [I LOVE AMERICA]は1996年の作品だが当時のハウス系のクラブではいつもかかっていたハウスアンセム。最近でもハウスのレコード屋に行けばいまだに新品が手に入ってしまうことがあるくらいなのでハウスの入門曲のひとつとして数えるDJもいる。今回のジャケはBIG BEATのCDSのものだが元はStressというレーベルで彼らの成功で株を上げたのか今もしっかりいろいろな曲をリリース続けている。ではMIXのご紹介。
 まずはFull Length 12 Vocal mix。非常にハウス的なベースラインから[I LOVE AMERICA]というリフレインヴォーカルがとこの曲を象徴する上ものが実にいい。このMIXではヴォーカルがフューチャーされており飽きさせない。全体的に熱帯的なメロディーはヒートアップするダンスフロアーにはぴったりだ。Original Sugar Daddy 12 Mixでは構成の違いはあるがFull Length 12 Vocal mixのヴォーカルを抜いたものとして捉えて差し支えはない。当時ハウス系のクラブ(特に大箱)に行くと必ずかかっていたMIXだ。使いどころとしては盛り上がりの持続に尽きる。二年ほど前にトランスのイベントに行ったときもかかっていた。今でも汎用性に富む名曲だ。Todd Terry MixはのっけからのトライバルなパーカッションでわかるようにラテンディスコのRemixとなっている。フレーズがサンプリングされた別物になっているがラテンディスコでみるとその出来は一級品!さすがはTodd Terryといったところだ。使い方としてはトライバルを前面に押し出すイベントならいつでも使っていいだろう。次にUBQ'S Slate Side Mix。こちらはピアノのバッキングを主体としたスタイリッシュなハウスのMixだ。このスタイルのMixはハウスの王道スタイルのひとつでハウス好きなら思わず食指が動く。ただ全体的にヴォーカルのサンプリングがリピートで使われておりさらっとは使えないのは痛い。最後にJohnick Henry St.Captain Mix。こちらはオリジナルの要素を残しつつも他の曲のヴォーカルを入れたいわゆる飛び道具として出来ている。妙なヴォイスも入っており正直手に余るMixだ…。今回はFull Length 12 Vocal mixの試聴を作ってみたのでさんこうにどうぞ。
 この時代のハウスは今のハウスシーンの基礎となっている曲も多い。私も片付けのあおりで久々に発掘したのだが今聞いても実にいい!!最近クラブミュージックを聴き始めた方はこの辺も漁ってはいかがだろうか?
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