Ilice's Review (7)



Symmetry-C


artist:Brainchild
label:MULTIPLY



 今回は少し古めの(またかよ・・・)お気に入りBrainchildSymmetry-Cを紹介しよう。そこそこに知られた名前ではあるので知っている方も多いだろう。BrainchildはかのAYLAとDJ TANDUの組み合わせでトランス黎明期にはなくてはならないユニットのひとつである。最近目立ってみないのは少々残念だ。今回のSymmetry-Cは1999年の作品で、トランスという曲が正に旬を迎えた時期の真っ只中にリリースされた珠玉の名曲の一つであると私は思っている。今回プロモ盤しかなく二曲のみのレビューとなるがどちらも見逃せない内容なのでご勘弁を・・・。
 まずはOriginal Mix。最近、「トランスはこのころが一番よかった!」という声をちらほら聞く。だが、このOriginal Mixを聞く限りではその意見もつい頷けてしまう位の説得力を持った曲だ。詳しく見ていくと、のっけからこの曲のメインフレーズをいろいろなシンコペーションで重ねた展開から始まり、それから初めて四つ打ちのドラムが入る。それからブレイクまではあくまで派手な音は入らない。淡白ではあるが音全体が目立つように調整されているため非常に心地よい。ブレイク後はオープニングとベースパターンをフィードバックさせて全体的に静かなミックスにしてある。当然構成を考える上ではPLAYの前半にかけて使うのが王道且つ定石のMIXだ。ただこのOriginal Mixは実はB面でA面はLange Breakbeat Remixとなっている。かのLangeによるMIXでこちらこそがA面を張っているだけにメインと思って間違いはない。メインフレーズこそ同じだが決定的に違うのはベースライン、Breakbeat Remixと銘打ってあるだけにベースラインはフュージョンの定番のリズム。コレ系のリズムはたまにドラムンベースで使われることがあるが今回のコレは恐ろしいほどマッチしている。ブレイクでは一時的に消え、そしてスネアロールの後のブレイク明けでこのリズムがまた一気に襲い掛かってくるさまは圧巻の一言に尽きる。このリズムについては試聴を用意したので参考にどうぞ。
 しかしLangeは最近の作品の出来もなかなか良かった。未だに勢いが衰えないというのはさすがにスゴイ。
Stomp to my beat


artist:JS 16
label:EMI



 今回はとても有名且つ、私が当時とにかくお世話になったJS 16Stomp to my beatを当時を懐かしみつつレビューしていこう。JS 16といえば正体はかのJakko Salovaaraであり、現在はdarudoの一人としてハードハウス&トランスユーザーには有名な所だ。かのトールポールも彼をいたく気に入っており、自分の設立したDUTY FREEレーベルにおける第一弾シングルを彼の作品にしたくらいだ。なかでも今回ご紹介するStomp to my beatは全世界に向けてEMIが発信したため耳にした方も多いだろう。今回のジャケは最も出回っているEMIのものでアルバムに入っているミックスはすべて網羅されておりユーズとしては十分だ。またREMIX盤も容易に手に入ることが多くハードハウスの入門にはぜひとも抑えておきたい一枚だ。ではMIXの方を見ていこう。
 まずはOriginal Mix。FM等でもよく流れかのゲームDDRにも収録された物のオリジナルだ。開始早々どんどんペースをあげる正にアゲアゲのトラックなのだがそれでいて全体に抑揚が付いており非常に使いやすい。歌詞も単純且つ明快でダンスフロアを狙った作りは使っていて気持ちがいい。ただ、全体で5分弱の曲だがピークを演出するには少し短くも感じる。その辺を察したのかMIX盤では9分程度のMIXもあった。次にJS16 Sound Design Mix。こちらは全体的にレトロテイストのディスコファンク風のMIXだ。よって使い方はおのずとハウスのパーティーでのカンフル剤として使うことになってくる。その一方で前にレビューしたMY TIMEのようなネオ・ディスコトラックと使っても全く違和感なかったので試してみてはいかがだろうか?そしてFactory Club Mix。こちらは今で言うトランス風味のMIXだ。この曲の出た頃はこの手の音は朝方に使われることが多く、JS16本人も朝方にプレイしたそうだ。ただ、現在使うには特徴のサイレン音がややこしくも聞こえてしまい、飛び道具に使うには少しネタが有名すぎて組むのは正直難しい所だ。
 やっぱりこの曲も「ダンスマニアウインターズ」においしく収録され、かつシリーズのベスト版にもよくはいっているので今でもチェックは容易だ。やはりヒット曲のなせる業だろう。
My Time


artist:Souvlaki
label:Wonderboy



 今回はSouvlakiMy Timeについて御紹介。90年代中盤に流行ったのはなんと言ってもダンスクラシックを今風にアレンジする「ネオ・ディスコ」といわれる手法。元々世界的にブレイクしたのはストレッチ&ヴァーンの「I'm Alive」という曲、こちらはアースウインド&ファイアーの「Boogy Wonderland」をサンプリングしてラップなどを載せたまさにネオ・ディスコの元祖といえる。だがネオ・ディスコの帝王というとこのSouvlaki、いわばScorccioレーベルのボスであるM. Summersに他ならない。コレ系の曲を見れば必ずといっていいほどクレジットに記載されている。ほかに手がけている物としては「JT PLAYAZ」[X-TREME」などおそらくどれもが聞けば「あれ?どっかで聞いたことがあるな」という既視感を必ず感じるはずだ。もっともそれが狙いでもあるのだ。
 さて今回紹介するMy Timeであるが今回のコレはCDSによる後発のMIX版、実際はオリジナルのアナログも持っていたのだが何処に行ったか忘れてしまったので次の機会に…。では気を取り直してScorcco Hot Mix。こちらは元々「It's My time」という曲をネオ・ディスコスタイルで作った曲だがそれを更にヴォーカルパートだけを抜き取りネオ・ディスコのネオ・ディスコミックスというなかなかすさまじい物を作っている。こういうのもアリ!といった所か?ちなみに当時Souvlakiといえば「Inferno」という図式が出来ていたくらい「Inferno」という曲が流行り、この後に出たこれMy Timeは使いが難しかった。尚、なぜか「Inferno」もなぜかこのCDsにしっかり入っているので注目したい所。そしてなんとTony De Vit Remix。こちらは「My Time」のヴォーカルをサンプリングしてディープ且つハードなスタイルで攻めて来る。ネオ・ディスコとはかけはなれたアングラなスタイルは彼ならではの職人芸といえる。使いどころはプログレよりのハードハウスで決まりだろう。
 実の所、ネオ・ディスコのCDはというと「ダンスマニアウインターズ」がとんでもなく出来がいい!選曲も多岐にわたり、もちろんダンスマニアにありがちな超有名人から「誰それ?」な人まで雑多に入っているのだが、MSTと言うディスコの黎明期から見てきたMIXチームが原曲を壊すことなくMixをしているので展開を覚えるにはもってこいのシリーズといえる。
Music Is Moving


artist:Contina
label:Nukleuz



 今回ご紹介するのはハードどころではまたまた有名なNukleuzからでContinaMusic Is Movingを御紹介。まずは今回のコレ、ジャケにHard House Classicとあるようにしっかりと元ネタがあります。90年代前半に最強のイタリアンハードハウスといわれたFargettaThe Music Is Movingが出所だ。現在でも根強い人気のこの曲をNukleuzがわざわざ二枚に分け四種類収録している。私自身は受け狙いだったのだが、なかなか面白いので徹底的にレビューしていこう。
 まずはKumara Remix。お決まりの始まりのパターンの後のドラムロールの後に颯爽と原曲をサンプリングした「うえ〜〜〜〜」というあおりヴォイス(私はどうしてもこう聞こえる)が懐かしさを誘う。曲が進むにつれ、つぎは原曲どうりの「The Music Is Moving〜」のボーカルが当時のまま入ってくる。ただ実の所どのMIXもこの展開はほとんど変わらないので音の硬さで使うのが良いかもしれない。このKumara Remixは少々音が軽いが上物はほかと同じ所からソフトといえる。つぎのBK & dBm Amber mix、こちらは前述のKumara Remixの音を硬くした感じ、展開や音使いは全く変わらないことから今回のジャケ絵であるDISK 1だけ買うと非常に寂しく感じてしまう。BKが今回のプロデューサーであるからといっても少々ひねりが無いのでミディアムというところだ(要は使い道薄い)。では、DISK 2に移りKarim Remix。これはヤバイ!!展開こそ同じだが、音が断然にハード!!ブレイク周辺ではサイケ調にビヨビヨしてきて実にイイ!!ハードハウスとゴア&サイケも相性いいのでつなぎに割り込みにと使い勝手もよく当然ハードの位置付けか。そしてChampion Burns Remix。ハードときたらこちらはやっぱり飛び道具、上物とサンプリングこそ同ネタだがやはり違う物として扱っていい。ただサンプリングをド派手に加工しているので二枚使いによる後にもって来るといいだろう。
 また、The Music Is Movingは'96にもMIXが出ていてこちらも面白い。尚こちらのミックス陣はTony de Vit、Tall Poul、Red Jerryとかなりヤバイ!!現在のハード&ワープの礎ともいえるので機会があれば是非。
 今回はKarim Remixの試聴を作ってみたので参考にどうぞ。
Where Are You Now


artist:The Generator
label:TIDY TRAX



 今回ご紹介するのはハードといえばここ!TIDY TRAXThe GeneratorWhere Are You Nowを満を持しての御紹介!!The GeneratorとはかのTSUNAMIの創始者の一人であるRobert Smitのプロジェクトでこの曲の実際の版権はPurple Eyeにあるようだ。今回のはDISK 1ということでオリジナルなどはDISK 2なのだが生憎ながら持ってない。だがそれを押しても紹介すべき激ヤバトラックだ!!MIXを担当しているのはなんとMoonman(Ferry Corsten)Trauma!!トランスとハードワープの二台巨匠が競演しているだけでゾクゾクしてしまう。ではMIX御紹介。
 まずはMoonman Remix。まずはドラムとベースがイイ!オープニングからしてやはりというか彼らしい入りはいつものとうりなので使いやすさは抜群だ。そこに薄いシンセに加えてオリジナルで使われているボコーダーつきのエフェクトとTIDYらしい熱い上物とがきて、それがブレイク明けには見事に昇華されるそれはトランスの王道かつ本物。まさに踊らずには入られない究極のナンバーだ!!そしてTrauma Remix。Traumaというとハードワープなひとには切っても切れないリミキサーなのだがMoonman相手に遜色ないものを作り出してきた、いや方向性が違うのでどちらが良いというのは比較自体がバカバカしい。こちらはオープニングからして直球の四つ打ち、ブレイクに向かってはやはりTIDYの音ではあるがおとなしく進行していくのには面白い。ブレイクにいたってはシンセパッドが使われアンビエントとも思える美しさだ。だがしかしブレイク明けは一転して、コテコテの硬い上物のあほシンセが覆いハードな本性をむき出しにしてフロアを直撃する!これこそが正にTIDYというべきハードハウスの王道かつ本物。今回は久々にMoonman Remixの試聴を作ったので参考にどうぞ。
 尚、こちらのトラック以前R3嬢が「今月の一枚」で触れていたTIDYのDVDのボーナストラックの正体だったりする…。あの時は「詳しくは知らない」といったのだがしっかり持ってました♪当然、私は首絞められた…。
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