Ilice's Review (14)



I Will Survive(CLUB MIX)


artist:Diana Ross
label:EMI



 今回はまたまた異色で女性ヴォーカルの大御所Diana RossI Will Surviveのクラブミックスをご紹介。1996年リリースだが最近聞いてみたらかなり良かったのでご紹介。原曲はアルバム「Take Me Higher」に入っている。トランス畑の人だとなかなか聞く機会はないと思うがモータウン時代から続くロック&ポップスのスピリットを注入したいなら一度聞いておいて損はないだろう。こちらはそのクラブミックスということでしっかりクラブよりに作られているのは言うまでもない。ではMIXのほうを見ていこう。
 まずはRoger Sanchez Overdose Mix。メロにピアノを持ってきたダウンテンポのMIX。非常にジャジーで踊るというより心地よくお酒を飲むイメージがあるMIX。今では流行のスタイルではないがハウスのパーティーで落ち着きを出したり、ほんとにバー中心のところで使われた。次にRoger Sanchez Planet Dub Mix。こちらはoger Sanchez Overdose MixのDubMixでつなげて聞くとそのままのような感じ。そのままつなげても違和感なく行くだろう。ヴォーカルで使われているのが後半のシャウトが中心、実はこれ妙にカレンヤングの「Hot Shot」の有名なフレーズにそっくりで同時期流行った「Hot Shot97」に絡めて使うとやたらに使い勝手が良かった。次にMotiv 8 Club Vocal Mix。当時の本命のMotiv 8によるMIXだ。やたらにヴェルファーレでかかってたのも印象的だ。前半からしてノリノリのハンドバッグハウスなのだが当然ヴォーカルが神の領域のためとにかくノレる。しかしメインフレーズ以外はわりと今のスタイルに近いのがポイント。特にちょうど真ん中ではブレイクがありその音はまんまトランス。この辺はMotiv 8がしっかりと時代を先取りしていたのがわかる。場合によっては今でも使えそうな勢いが感じられる。最後にSure & Pure Deep Vocal Mix。当時は私も良さがあんまりわからなかったが、今聞いてみるとなかなか面白いMIX。ダウンビートなアンビエントサウンドであるのだがトライバルなドラムとベースのミクスチャーにより一種の異空間を形成している。いまならプログレに絡めても割合面白いのでは?と思った。
 この曲も然りだが、古い曲聞きなおすと「今の音じゃん?」と思える曲も意外と多い。こういう曲を見つけるたびクラブミュージックは聴き込むのが大事と知らされるのだ。
Clear Blue Water


artist:Oceanlab feat.Justine Suissa
label:CODEBLUE



 今回はOceanlab feat.Justine SuissaClear Blue Waterをご紹介。ジャケのとうり透き通るようなトランスで好きな人も多いことだろう。レーベルはトランスファンには馴染み深いCODEBLUE。CODEBLUEと聴いた瞬間ディストリ物と見て、初出のレーベルを探すように成れればある程度レーベルのコツがわかってきた証拠だろう。CODEBLUEがディストリビュートした曲は多く、「Gouryella」「Wonder」「Starlight」など名曲だけでも枚挙にいとまない。CDSも多く出すことからトランスファン(トランスジャンキー)なら何度もこのレーベルにお世話になったはずだ。そんなClear Blue WaterのMixの方を見ていこう。
 まずはOriginal。ベースラインは割合おとなしめ、しかしこの曲は上物全てが半端でないためにこうしておとなし目に行くからこそ全てが生きてくる。まず目立つのは「Clear Blue Water〜」と唄うJustine Suissaの哀愁みを帯びた美しいヴォーカル!この曲の良さはこれが物語ってると言って過言ではない。ブレイク空けに入るシンセとあわさると更に引き立つ!染み渡るようなアンビエント感に浸れるだろう。踊りはもちろん聞き入るリスナーにもオススメだ。次にFerry Corsten Mix。銘の通り彼のMIXだ。まず一発で聞いてわかるのはベースライン全体が派手になっておりおのずとダンス仕様になっている。ブレイク前に入ってくる新たに加えられたシンコペーションのシンセが更にダンサブルにしている。ブレイクは徐々にアゲて空けていくタイプなので場所を選ばず使えるのもポイント高い。ピークの持続にはもってこい!最近いまいち精彩のなかったFerry Corstenだがそんなのを払拭するオススメのMIXだ。
 だがこの曲…考えてみれば歌らしい歌はほとんど入ってないことに書き終えて気がついた。
Hero


artist:Papaya
label:Blanco y negro



 今回は少し異色でPapayaHeroをご紹介。かのDDRに収録されたのも今は昔…そう1997年の作品である。この頃のダンスポップのアーティストといえばME&MY、Smile.dk、そしてPapaya辺りか?一部のクラバーにはバカにされることも多かったのだが、こうしてちゃんとアナログも出ている。しかし、こう実物を見る人は少なかったのではないだろうか?言い換えれば、しっかりと市場に出ていたのにむざむざ見逃しただけということになる。実際の所はEMI傘下と言う事もあり全体的にREMIXの出来がよく(というより面白く)いい感じで使えるため是非ともこれを機にその辺もチェックされてはいかがだろうか?ではMIXを見ていこう。
 まずはExtended Mix。正真正銘のダンスポップのサウンド。日本の歌謡曲やユーロビート同様にAメロ→Bメロ→サビの歌展開なのでこの辺から洋楽を聴き始める中・高校生が多いのも頷ける。特徴としては随所に入るパーカッションと解り易いミドルテンポのリズムなどは基本に忠実で解り易い。それに加えヴォーカルの発音がなかなか良いのも注目だ!少し聞けばヒアリングがとにかく苦手な我々日本人でも歌詞を聞き取れる。さすがに幼少の頃イギリスに住んでいたこともありその頃に正式なキングストンイングリッシュを習得したのだろう。Papaya本人が来日した際のライブも見たが、私も綺麗な発音の歌声につい口ずさんでしまった。次にExtra Mix。噂に名高い問題のMIXで序盤はトライバル要素の強いハードハウスに注目!かなりビヨビヨしたNu-NRGで普通にUKハードに併せても全く違和感はない。しかし盛り上がり系の上物がイントロになりいつものヴォーカルが入るのには初聞きの際には誰しもびっくりする!私も一度フロアで使ったことあるが、そこまではガスガスに盛り上がってたのにヴォーカル入るといきなりでフロアもびっくりしていた。一発ネタだが一度やってみるとなかなか面白い。今回はこちらの試聴を作ったので参考にどうぞ。そして、Joywork Hi Octane Club Mix。こちらはExtended Mixの要素をちりばめたトランス風ののMIX。もっとも最近のトランスとは異なり派手なシンセはなく抑え目のシンセの上物とベースラインだが今のトランスの多用されるスタイルのためエピックハウスと捉えた方がいいかもしれない。オリジナルのパーカッションを盛り込みトライバルな雰囲気を残しつつもしっかりと使えるように仕上げたMIX。今でも十分に前半で使えるのではないだろうか?またダンスマニアデラックス3のMIXでも使われているのが印象に残る。
 関係ないが、私は過去DDRでこの曲をやっている時派手に転倒して捻挫したことある。…ある意味痛いプレイヤー…。
Secret Love


artist:Ian Van Dahl
label:EMI



 今回はIan Van DahlのSecret Loveをご紹介。Ian Van Dahlというと当サイトではR3嬢が既にCastles In The Skyをレビューしているがそちらもこちらも彼女らのアルバムAceからのシングルカットとなっている。色々なレーベルから出ているが今回はメジャーの代表格EMIのものでMIX自体は5曲、だがそのうち二曲はRadio MIXなのでそちらは割愛する。ではMIXを見ていこう。
 まずはC&V's Extended。C&VとはIan Van Dahlのプロデューサーである。Christophe ChantzisEric Vanspaunwenから来ているもの、よってこれがメインのMIXだ。完全な四つ打ちでドラムライン自体は割とシンプル。そして軽くシンセのリフが入りそれからヴォーカルが入ってくる。作を追うごとにヴォーカルが重要視されていくが、今回はヴォーカルとシンセが交互に入りどちらも互いの存在感を主張したMIXになっている。ブレイクではヴォーカルが中心、それがあけるとシンセが押し寄せたりと面白い。ただ、伸びやかですっきりしているのだが、全体的にポップな作りであるのでフロアへの投入は少し難しいと思う。また気になるのは曲の終わりがどうにもブッツリ切れるのでリスニングと割り切るのもいいかもしれない。次にMidnight Extended。こちらはどうもC&V's Extendedの構成を変えただけの感がある。ユーロビートのREMIXによく見られるのだがそれと同類と見てもいいだろう。細かい所だと終わり際がちゃんとなっているとか程度なので、正直、どちらを使ってもそんなに変わらない。そしてWierzbikci Mix。こちらはC&V's Extendedの音と展開を残しつつ新たにフロア的な音を加えたMIX。なかでも特徴的なのはブレイクのところでヴォーカルをぶつ切りにした「アッ、アッ、アッ、アッ、アッ、」というフレーズ。非常に無機質なのでフロアに違和感を演出しつつその後にしっかり盛り上がり系の音が来るという面白いMIXだ。
 でも総じていえるのは三曲とも明らかな違いがないため特徴を捉えづらい。もっと多岐にわたるリミキサーにMIXを依頼してもらいたい所だ。
Venus (Meant To Be Your Lover)


artist:DJ Cor Fijneman feat.Jan Johnston
label:Black Hole UK



 今回のセクションではヴォーカル物トランスを中心に取り上げよう。今回ヴォーカル物トランスの定義とするのは明らかな歌が入っている物。ワンショットやループ程度の物ではなくしっかりと入っている物と定義していきたい。そんな中での今回はDJ Cor Fijneman feat.Jan JohnstonVenus (Meant To Be Your Lover)をご紹介。ヴォーカルを勤めているJan JohnstonはBTを始めとしたトランスの歌物には何度も登場しているので耳にした方も多いだろう。今回は更に作詞として参加しているので彼女の世界をしっかりと堪能できる一枚になっている。ではMIXのほうを見ていこう。
 まずはTiesto Remix。Tiestoというとどうしても先入観から泣きの美しいシンセリフを想像してしまう。今回もブレイク明けに確かにあるのだが、その使い方には「なるほど」と思えるうまい使い方だ。当然曲が始まると何より目立つのは冬の雪のような煌びやかで儚げなJan Johnstonのヴォーカル。いってしまえばアカペラで聴いてもいいくらいなのでこれを目立たせない手はない。展開としてはヴォーカルが全体にかかりブレイク明けにリフだけそれからあわせた物という王道の展開。だが、他の曲に比べブレイク明けのリフの音が抑え目になっているためリフとヴォーカルが合わさった時にヴォーカルが生きてくるのだ!!使い方の例としてはヴォーカルを生かすならそのまま、MIXのテクを見せるならブレイク明けでうまくトリムを上げるといいだろう。次にDJ Cor Fijneman's Outstanding Mix。言うまでも無く、こちらの方も当然ヴォーカルを生かした作りになっている。展開は先ほどと変わらず、こみ上げるような音になっているのが特徴。若干全体的にハードなつくりなので少し使い方が難しいと思う。盛り上げから盛り上げのつなぎとして使うのが妥当ではなかろうか?
 しかし気になるのはBlack Hole UKちょっとTiesto頼りすぎの気が…自身のレーベルなので参加は当然だし、確かに出来は文句無くいいのだが外注のMIXも聞きたい今日この頃。
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