Ilice's Review (15)



Faith


artist:Starecase
label:hoperecordings



 今回はStarecaseFaithをご紹介。基本的によく知らないアーティストで、私もなんとなくワゴンセールで手に取り半年ぐらい放置していた曲なのだが、ふと聴いてみたら妙に耳に残り面白かった。サイトのほうを見てみたが曲だけでなくアートをメインにしてそのほかに曲を作るという感じ。ではMIXのほうを見ていこう。
 まずはOriginal。こちらはココでは始めて扱う2STEPの曲だ。ハードハウス畑の人には特になじみが薄いのが2STEP。簡単に解説しておくと、シンコペーションを基幹としたダンスビートでハウスの流れを汲むのだが、ポイントはハウスの根源である四つ打ちを完全に廃していることにある。BPMは130程度で全体的に音が軽めになる傾向があり、UKではR&B畑の人が流れひとつのスタイルとなった。ダンスフロアではR&Bほどゆったりとせずハウスほど規則的ではないというイメージから「はじけないけど、踊りたい」というクラウドを上手く取り込んだといえる。そんななかでこの曲は2STEPらしいベースラインとヴォーカルを乗っけた教科書どうりの展開。このヴォーカルが妙に深く印象深く聞こえるのが最大の評価点!当然私も2STEPは知識程度にしか知らず疎遠的だったが、それでもヴォーカルの聞きやすさから気に入ってしまった。この曲が気に入れば2STEPを少しやってもいいのでは?試聴を作ったので参考にして欲しい。次にLoafer mix。こちらはしっかりと四つ打ちのリズムを入れたエピックハウスのREMIXになっている。オリジナルが4:20に対しこちらは9:20と尺自体が違うため、意味自体が違うのが納得いただけるだろう。メインの音もヴォーカルとそれを引き立たせるための上物と普通にこっち側の選曲に持ってこれる。構成としてはあまり盛り上げようとせず、おとなし目のクールダウン的な位置づけ。ヴォーカルが心地よく聞けるためか最後の締めに使うと爽やかに締められるはずだ。
 余談だが、上はジャケの表だが、裏は男性が持っていた紙袋を手に女性が憮然と立ち去る男性を訝しげに見つめるというなんだか妙にひと悶着ありそうなジャケになっている。正直ワゴンセールの癖にジャケ買いしてしまった…。
Carla's Theme/Outlander


artist:Transa
label:hookrecordings



 今回はTransaのEP、Carla's Theme/Outlanderをご紹介。hookrecordingsのシルバーシリーズの一曲でこの曲のほかにもたくさんの名曲があるがシリーズが40曲以上平気であるためさすがにそんなに持ってない。結構中古で流れているので安全パイで買うには良いシリーズだ。今回も渋谷のユニオンで入手したものだ。ではMIXを見ていこう。
 まずはCarla's Theme。Transaの曲は結構ヴォーカル無しが多いためアゲ屋には非常に重宝される。そうでなくても盛り上がりの持続に挿入するとか、締めに使うなど使いどころは多い。オープニングはベースとドラムがしっかり入った既にある程度出来上がった展開で始まる。それでも少しずつ音を加えるのだが、ウザい音にならないのはさすがというところ。しかしブレイク空けには注意!思ったほど盛り上がらないのだ。よってピークの曲の前後に使い盛り上がりを演出するのに使うのが一番ではなかろうか?続いてOutlander。OUT OF THE BLUE的な直球で入るオープニングだけあり曲名からして意識をしたのではないだろうか?展開としてはこちらの方が上物の哀愁色が強い、特にブレイク空けはその音と絡むので自然とテンションが上がる。リスニングで聞いても体でリズムを取れる心地よさは流石にTransaといえる。よって使い方としてはOUT OF THE BLUEと同じ、もしくはいやみな位に絡めると面白いはずだ。
 しかしこの曲のジャケには制作年が書かれておらずいつ出たのかわからない。音的には2000年前後と推測されるがどうだろう?情報求ム…。

 追記、NOVA様の情報により'99年物と判明。情報ありがとうございます!
Love Parade 99


artist:Music Is The Key
label:Low Spirit



 今回は趣向を変えてイベントのテーマ曲を取り上げた。毎年ドイツのベルリンで開催される世界最強のテクノの祭典「Love Parade」その1999年の公式テーマ曲がMusic Is The KeyLove Parade 99。「Love Parade」のなかでも99年は特別な年として歴史に残っている。元は200人程度のパレードだったがこの頃には120万人を超える一大パレードとなり、おりしも99年は天候に恵まれ最大150万人は動員したといわれる。しかしこの年はパレード中に刺殺事件が起こり一名が死亡、これも世界的に取り上げられ翌年は参加が100万人まで減り、他国でも同時開催により分散化が進んだ。その99年のテーマ曲がMusic Is The KeyのLove Parade 99だ!Music Is The KeyというのはLove Paradeの創始者でありジャーマンテクノの雄Dr.Motteと世界最強のテクノDJの一人WestBamの夢のユニットであり99年のテーマ「Music Is The Key」から取られている。テクノと聞くと身構える人も多いが純粋に聞きやすい入門且つ重い曲になっている。
 まずはOriginal Mix。最近は拍子を崩すテクノも多いがこれは純然たる四つ打ちなので他ジャンルの人たちも引き込み易い。展開自体はミニマルの王道ともいえる規則性の中にクラップなどで音をずらす規則と不規則の融合を上手くミックスしている。徐々に音が加えられていき徐々になくなるのでテクノMIX(クロスフェーダを中央にしてボリュームだけでMIXする方法)に使える。ディープハウスとも相性はいいのでその辺やる人は持っててもいいMIXだ。次にK-Paul Mix、こちらは更にミニマル色を出した展開だ。MIX自体はOriginalにあるフレーズをサンプリングした程度で全体的に作り変えてある。途中で拍が変わるところがあるのはハウス、トランスリスナーにはどうしても気持ち悪いのではないだろうか?よってコアなテクノユーザ向けとなる。逆にテクノ畑の人には組まれすぎた展開に入る絶妙なシンセやクラップが浮揚感を出しいい具合にトリップできるだろう。最後にTekkno Mix、こちらはOriginal Mixの要素を残したトライバル風のMix。99年はテクノ界ではトランスが台頭すると共にトライバル色の強い音がテクノと組み合わさったのも忘れてはいけない。トライバルというのはドラムやパーカッションに土着的な音を使った音が中心で全体的にワイルドな音が展開されるのが特徴で割とBPMを変えても上手く聞けることなども面白い。よって色々な場面で使い易いのが受けている。そういう要素もあり全体的に音が硬くハードテクノを地で行ったMIX、自分の音の傾向に合わせてOriginal Mixとチョイスするのが賢い使い方だろう。今回はOriginal Mixの試聴を作ったので参考にどうぞ。
 あと知っておきたいのが「Love Parade」は平和をスローガンとしたデモ行進の意味を込めたパレードだということ。日本のデモ行進は基本的に横断幕を掲げのっそり歩いているイメージがある。私などは正直その行進にいまいち説得力を感じない、むこうではこのように自分の職業畑でデモ行進を行うことが公然とされている。日本でのデモ行進は若者から見ると単なる邪魔でしかないし意義も見出せない。若い者を引っ張れる者が自分のスタイルで訴え全世界から参加を引き込む「Love Parade」、日本が欧米に勝てない最たる理由ではなかろうか?そういった意味でも過去に死亡事件が起きてるのはなんとも残念だ。
God Music


artist:Du Monde
label:FATE



 今回はDu MondeGod Musicをご紹介。Du MondeといえばNever Look Backという見方する人が多かったのだがこの曲はそんな意見をぶち破った名曲のひとつ。大それたタイトルとも相まって2002のフロアを沸かせた名曲だ。では早速MIXを見ていこう。
 まずはOriginal Mix。注目すべきは変則的なドラムパターン、オープニングは140前後のトランス定番のリズムだが、ブレイク近くでは半打ちとなる。上物は普通に乗ってるので違和感が感じるはず。元々はハードコアロックでためを出すために使われる手法なのだが、結構使われる手法なのでテクノでも使われたりする(むしろそっちが本命)。全体の中でもこのブレイクは秀逸で重いドラムと相まってフロアのリズムを調整してくれる。ココから来るブレイク空けは当然ドラムパターンを戻した上で来るので、その疾走感はハンパでない。やはりブレイクを意識したいのでここぞというところで全体たっぷりとって組み込みたい所。次にCosmic Gate Mix。Original Mixの変則ドラムはなくし使いやすくブランシュアップされたMIX。そうはいっても上手く調理されたベースパターンとタイミングの良いパーカッションが一旦無音から始まるブレイクを上手く演出してくれる。やはりそこから来るブレイク空けは底値なしに圧巻!面白みはないが使いやすさではこちらに分があるだろう。
 なかなかミーハーでありつつも基幹はしっかりしている。こういう曲こそがフロア、リスナー両方面に受けいれらるのだ。
Someone


artist:NEO & FARINA
label:Platipus Euro



 今回はNEO & FARINASomeoneをご紹介。Platipus EuroはPlatipusが2003年になって立ち上げたトランス専門レーベルとの事だ。Platipus本体はいつでも最先端のものを提供しgekkoはプログレッシブトランスを中心に出すようなのでユーザーとしては狙いやすいだろう。ジャケの方は見てのとおりぱっと目を引く赤紫のジャケながら誰がどう見てもPlatipusだとわかるデザインだ。今回は二曲入りなのだが曲が一曲とREMIXが一曲の珍しいEP構成、無論一曲ずつ見ていこう。
 まずはSomeone。いきなり「Someone〜」とボコーダーのかかった怪しげなボイスで始まる。オープニングのクラップ的フレーズはVincent De MoorのFLOWTATIONに近いアプローチだ。注目すべきは前半の音シャープなシンセパッドと絡み合うストリングスにはかなり浸れる。無論ブレイクでも似たような展開で盛り上がるのだがこちらは更にしっとりそして伸びやかにやさしくフロアを包み込む感じ無理に盛り上がらせるのではないため盛り上がりへの布石としておいていきたい良質な曲だ。次にNeo & Farina's Binary Refined。こちらは始めに言っておくと二面性の捉え方がある。まずは前述のSomeoneのREMIX、そしてもうひとつはBinary Finaryの1998のRemixだ。なんとクレジットに正式なRemixとして書かれている。いわば2003だ!!展開としては先ほどのSomeoneのオープニングなどを組み込み1998の音を組み入れているというかなりアツイ展開。当時のような押し寄せるブレイク空けはもちろん健在。ただブレイクを長く取ってしまうため即効性はない。使い方としては先ほどのSomeoneと同じになってくる。しかし考え方変えると同じ元ネタの曲を何年にわたって同じ場面で使いまわすよりは場面場面で色々な使い方するほうが面白い。
 ネタものといえばそれまでだが、月日を重ね使い方を変えて甦った曲が出てくるのはDJやクラバーの心をいつでも揺さぶってくれる。温故知新と言う言葉はクラブミュージックの心理の一つともいえる。
戻る