Ilice's Review (21)



Voice Of An Angel (EP)


artist:Matt Darey & Marcella Woods
label:Incentive



 今回はMatt Darey & Marcella WoodsVoice Of An AngelのCDS,EPをご紹介。私自身あまりCDSは買わないしレビューもほとんどしないのだがコレは色々な意味で別格なので取り上げた。まずはCDSのお得感、アナログで見たときは半分くらいEditでショボくさく手を出さなかったがCDSはしっかりまとまっている。なによりうつくし系トランスをレビューすると言っておいて、コレだけの物をレビューしないというのは流石に無粋であろう…。さて、コレはMatt Darey久々にリリースであり、Voice Of An Angelに関してはMarcella Woodsとのコラボレーションとなっている。それでは早速MIXを見ていこう。
 まずはVoice Of An Angel Full Vocal。入り自体はシンプル且つ王道の物、しかし活目すべきは上手く持ち味を生かし加工された伸びやかなヴォーカル。それに追随するように上物もシンプル且つ上品に添えられている。余りに王道過ぎてMatt Dareyという銘に踊らされたリスナーは物足りなく感じるかもしれない。だが、当然それはリスニングだけの話、タイミングよくばらされたフレーズや短めのブレイクなどコレは当然「他の何かと組み合わせて使え」と言っているような物。他の盛り上がりの曲と使うとその効果は格別!それこそインストの盛り上がりの後に1、2曲おいて使うと格別だ!ちなみにRadio Editはこちらのショートバージョンとなっている。続いて、Voice Of An Angel Marcella Woods vs Matt Darey Remix。こちらはVoice Of An Angelのアッパーバージョン。のっけからハードな音使いで進行していく。但しちょっと序盤が仰々しく、今メジャーなハードトランスの音にはちょっと合わない。だがその辺の音を除けばトランス→ハードトランスの継ぎに使えるだろう。その際にはある程度のBPM調整は必須だ、当然このままでは遅めなので上げるのだが、ピッチアップしてもしなくてもなかなか面白い音になるのでブレイクで上げたりする荒技も面白いだろう。次に今回最大の目玉Nocturnal Delight。こちらはMatt Dareyの単プロで仕上がった極上のインストゥルメンタルトランス。淡々とくる旋律から除々に絡み合う美しい旋律、何より、大きなポイントはシンセとピアノのタイミングのいい切り替えと空を翔るようなフランジャー!そして長い溜めからくる静かかつ湧き出るようなフレーズは強烈に脳裏に焼きついてくる。スペクトラム分析してみると所々煽るように吹き出る波の鮮烈に心奪われてしまう。吹き出る間欠泉のような突発さと共に時間おけば湯と成り落ち着ける暖かさを持った曲だ。収録時間は9分近く、セカンドブレイクまでの間も長いので繋いでもいいし最初に使ってもいい。だがこの曲はtidy twoの「Resonate 4」、また自身のページのMIXでも一曲目に使われている。前者は少し早めに調整、後者は普通に使っているが両者とも後ろが良く引き締まって聞けるという一曲目効果がある!名だたるDJたちも当然この使いやすさに共感しているのは余りに有名だ。前半の選曲に新たなる一石を投じたといっても過言ではないだろう。最後にElectro Buzz。名前の通りエレクトリカのような曲だハードハウスほどハードではないしテクノ、エレクトリカほど硬くはない。全体的にトランスのリズムでブレイクビーツを展開している感じか。実際の所、かなり変な展開で面白い!前半はエレクトロサウンドで妖しいが、後半は割と綺麗なフレーズ入ってくるあたり飛び道具としてくれといわんばかりだ。また気がついたところではアウトロが妙にFrowtationに似ている(またか…)。この辺の面白系で固めるのも面白いかもしれない。尚、今回の曲はほとんどMatt Dareyのサイトで聞けるので参考にして頂きたい。
 実際の所トランスでMIXをやりたいなら持ってて後々損のない一枚といえる。
New Perspective


artist:Leigh Paul
label:Liquid Asset



 今回はLeigh PaulNew Perspectiveをご紹介。まず最初に言っておくと、私もこのアーティスト見たことないし、プロモ盤なんで奥付もないので正体も全く不明。この辺はご了承願いたいと共に情報提供していただきたく感じる…(情けな…)。前置きはショボイが曲はかなりいいので早速MIXを見ていこう。
 まずはOriginal Mix。いきなりのベースラインはドラムやベースが完成された状態で始まるのでかけてみると些か急だ。そして二分前後でブレイクが来る、この辺も急だ。展開だけで言うと@社のサイバートランスのCDみたいな感じで嫌気がさす。しかし、音自体は非常に伸びやかで気持ちいい!ブレイク前のパッド展開は古さこそ感じるがシンセのストリングスと絡み合いフロアを支配する。強い風で木々がざわめくような激しさと心地よさを体感できる。展開自体は急だが曲全体は6分20秒とサイズとしては上出来である。前半の急な展開をうまく工夫すれば要所で使える。継ぎの腕が問われる一曲だ。今回はこちらの試聴を作ったので参考にどうぞ。
 続いてKnuckleheadz Remix。KnuckleheadzがMIXしているだけあってこちらは疾走感重視のハードなMIX。それに加えブレイクビーツやサンプリングも多用してあるので一時期言われた「ハードブレイク」に近い。サウンドで言うと全くOriginal Mixとは別物の仕上がりになっている。そもそもOriginalで使われているのはメインのフレーズがサンプリングで使われているだけというのは驚きだ!そして、ベースラインはかのFrowtationにそっくりだし、そのほかのフレーズもどっかで聞いているものばかりなので、ちょっと詳しい人にはネタ満載のお笑いトラックとも取れてしまう。使い方はかなり難しく、フロアが熱い時に他のジャンルと絡めるのが妥当か?割とハードコアなんかともいい具合に合った。
 なかなか正規盤が気になるので出たならCDSの方を欲しい気がする。更にMIX増えると嬉しいがLiquid Assetだと紙ジャケで二曲限りの感が…。
Blue Fear


artist:Armin Van Buuren
label:United



 今回はArmin Van BuurenBlue Fearをご紹介。最近当BBSでも話題になったアルバム「76」からのシングルカットで魅惑の限定青色ビニールのはずだが…テクニークでは思いっきり「再販」と書いてあったのが商売っ気を感じる…。話の通り片面は鏡面加工でMIXは一曲Edit Featuresのみ早速見ていこう。
 全体の尺の長さは9分27秒と十分の長さになっているので完全にフロア対応となっている。まずオープニングはドラムが無く、しみるようなシンセパッドにグロッケンのような硬い単打ちのピアノ音、これだけで好きな人ははめられちゃう位美しい。イントロは刻むようなラインが特徴のベースラインにメロと薄いシンセパッドで程なく進む。そしてオープニングの音とメインフレーズの音が重なった所でブレイク。実はここのブレイク行くまでの経緯が素晴しい!!支流が重なって本流になるが如く重なる水の流れを感じるようだ。その先も絡み合う音が押したり引いたりするタイミングが絶妙!本流に流れた水は海で波になる如くの展開を見せてくれる。だが全体的に見るとフロアを支配するほどの勢いまではない。だがその過程を浸るうちに襲ってきた波はとどまる所を知らなくなってしまう。つまりはこの後にメインを持って来れば展開的に間違いないだろう。片面ではあるが面白い使い方が出来る一曲だ。
Come Around Again


artist:Signum feat.Anita Kelsey
label:A State Of Trance



 今回からは美し系のエピック&バレアリックトランスを紹介しよう。常に朝というイメージがあるこの辺のサウンド、チルアウトというシーンを常にリードするには欠かせないサウンドだ。踊るだけでなく浸るという使い方も出来ることからリスニングユーザーにも人気が高いのは周知のとうりだ。
 そんな今回はSignum feat.Anita KelseyCome Around Againをご紹介。既にヘビーなユーザーからは注目の的になっているレーベルARMADA MUSICの傘下レーベルであまりに良質なトランスが多いので目が離せないレーベルだ。しかもあのComing On StrongのSignumである!最早買わないのはありえない!尚、今回のMIXはVocal ExtendedDub Mixの二曲であるが、Dub Mixはヴォーカル抜いただけなので一緒に見ていこう。
 まず、オープニングは割とシンプル。しかし少しすると美しいヴォーカルのリフレインがあたりを包む。このパン振りは最早神業!イメージでわかる人には「ゼルダの伝説 風のタクト」で風を変えた時の視点の感じそのもの。そう美しいヴォーカルは正に風、一陣の風が前半だけで音場を一気に支配する。その技術には気高い気品すら感じられる。そしてそのままヴォーカルが入ってくるとほとんど精霊が語りかけるようなイメージ。そして、ブレイクのただただ浸っている所でのドラムロールはとにかく心が高揚する!気がつけば体が動く。浸らせるのに体が動く、バレアリックサウンドはあくまでダンスミュージックという事を再認識させてくれる。反面Dub Mixは今回の肝のヴォーカルが一切ないのでインパクトにかける。インパクトこそかけるがそのピアノ単打ちのバックトラックは秀逸、逆をいえばインパクトにかけるならおとなしいタイミング「持続」に使えばよい。二枚使いによるVocal Extended〜Dub Mixというカードも切り札として考えてもいい。その際には尺が長くなる(どちらも尺が8分以上)ので注意したい。今回はVocal Extendedの試聴を作ったので参考にどうぞ。
 うつくし目のトランスだと今まで一つの基準としてSalt Waterがあったのだが、正直久々に本気で超えているような曲だ。…マジでSignumアルバム作んないかな。
Holding On To Nothing


artist:Agnelli & Nelson
label:Xtravaganza



 今回はAgnelli & NelsonHolding On To Nothingをご紹介。最近全く話題に上らずレーベルの存続自体が怪しまれていたXtravaganzaからの復活リリースで話題になった本作。ここのところエピックトランスを離れていた私の心を引き戻してくれたサウンドは正にXtravaganzaのサウンド真骨頂の展開を見せてくれるだろう。では早速MIXのほうを見ていこう。
 まずはOriginal Mix。王道的なバレアリックサウンドに美しいヴォーカルがのったトラック。前半は重いラインが特徴的且つ長めに作ってあるので普通に使い易い。後半のシンセは三連シンセながらおおらかに作ってあり、サウンド展開は古いが飽きさせない。続いてClub Mix。こちらは展開自体は変わらないがOriginal Mixより更にベースラインが強く、フロア向きのサウンドになっている。 また、後半のシンセは伸びやかでオーソドックスなものになっている。ミキシングの段階で高音を強調すると更に気持ちよく浸れるだろう。どちらかというとリスニングなら前者、フロアなら後者の方がしっくりくる。使い方はどちらもバレアリックサウンドなどをかけているならタイミングはいつでもいい感じだ。朝系の音を求めている人には最早必須のサウンドになるのは間違いないだろう。
 尚、今回のレビューは相互リンクをさせていただいているサイト、Let's Grooveに過去投稿した物を加筆修正した。
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